【留学体験記:番外編】学校に行ってみた Wimbledon College of Arts 高村千紗さん
2010.08.27
ファウンデーション課程
きょうの探訪スポット: Wimbledon College of Art
●●●●● お嬢のカレッジ、Wimbledon College ●●●●●
ゴッホが猟銃自殺を遂げ、エゴン・シーレが生まれた1890年、ロンドン南東部ウィンブルドンの男子校で美術専門のクラスが新設された。Wimbledon College of Artの誕生である。やがて大看板となるシアター学部は1932年に設立され、英国のシアター・デザイン教育の草分けとなった。以来、ファインアートとシアターに強い学校として地元に密着した発展を続け、ロンドン芸大を除けば「ロンドン市内に唯一残る(まともな)アート・スクール」と謳われたWimbledonであったが、2006年、とうとうロンドン芸大の傘下に入ることになった。と書くとちょっと哀しいエンディングのように錯覚するが、手薄だったシアター部門を強化できたロンドン芸大と、ロンドン芸大のメンバーとして知名度を大幅アップできたWimbledonの両者にとってこの『結婚』の意義とメリットは計り知れない。
メンバー入りしてからまだ4年、現在も近隣の、いわゆるミドルクラスのお嬢さんたちがカレッジの主流を占めていて留学生の数もそれほど多くないため、学校の中は白銀の世界、じゃなくて白人の世界。日本人にはまだ馴染みの薄いカレッジだが、留学生が少ない分、超手厚い看護(ケア)が受けられるところが大きな魅力である。「ここのぬるま湯に浸かるともう他には行けない」とは過去のユニ学生の言。校舎はロンドン有数の高級住宅地にあるが、環境に厳しいPTAの目が注がれるうら若き女子学生に特にすすめたいカレッジである。
今日の随行ナビゲーター : 高村千紗さん
一路、南へ
このところ悪天続きだったので天気のいい日を狙ってWimbledon 訪問を企てたユニ調査員、ユニコン事務所最寄りの Tottenham Court Road 駅からWaterloo駅で下車し、Surbiton行きの電車に乗り換えます。電車はテームズを越え一路南へ。30分後にはWimbledon駅に到着しました。
改札で本日のナビゲーターを務めてくれる千紗さんを待つ間に持参したデジカメで駅周辺の風景を激写。夏のテニスマッチが有名なウィンブルドンはロンドン有数の緑豊かな高級住宅地、そのせいか道ゆくおばさま達の装いがなかなかリッチ。
ファウンデーション専用校舎に向かう
やがて現れた千紗さんといっしょにファウンデーション専用校舎に向かいます(メイン・キャンパスとファウンデーション専用校舎は別々)。「Wimbledonといえばかわいいお店とカフェと豪邸のオンパレードでしょう?!と鼻息荒い調査員に「ええ、でもそれは丘の上の隔離された別世界で、学校はその反対側の庶民的なエリアにあるんですよ。あちらに行くのはよほど用事のあるときだけど、確かにすんごい大豪邸がずらーっと並んでて、お散歩するだけでも楽しいですよ」 高級地という単語にめっぽう弱いユニ調査員、千紗さんのコメントに想像が膨らむが、千紗さんも授業が忙しい身、そっち方面の探索は今日のところは断念じゃ。
ファウンデーション専用校舎は駅から歩いて15分くらい。キャンティーン(学食)のあるメイン・キャンパスとはちょっと離れているので普段のランチはお弁当やサンドイッチで済ませているそうです。ならば、と、「たまにアジアンなものが食べたくなったときに寄り道して買っちゃう」という千紗さんお勧めのタイ料理屋さんに寄り、ランチをテイクアウェイすることにしました。ランチ片手に歩く通学路の周囲にはのどかな住宅地風景が広がっています。
到着
住宅街のなかに突然出現した校舎は地味めでこぢんまりした建物。「暖かくなるとここはスモーカーでぎっしりです」という校舎脇のベンチはこのところの寒さのせいでまだ閑散としていました。
お邪魔しま~す
扉を開けるとこんな感じ。この奥は各種ワークショップで自動販売機が鎮座しています。この自動販売機のお菓子とジュースが学生たちの小腹を満たしているそう。
階段を上ってスタジオへ。スタジオはファッション、シアター、ファインアートなど科目別に分かれています。PCルームもあります。廊下には乾かしている途中の作品や、誰かが遊びで作って飾った蝶々などがちらほら。
貴重な同胞
千紗さんは一番人気のシアター専攻向きファウンデーションに属していて、総勢は60人くらい。日本人は千紗さんを入れて2人だけ。スタジオに行くとそのもう一人の日本人学生・マリさんに遭遇しました。ここでは貴重な同郷仲間です。あの課題っていつまでだっけ、面接の日程案内来た?などひとしきり情報交換が行われる横で彼女たちのスタジオの様子を撮影。
ここでチューターが「出席を取るよ~」と入ってきたので調査員は一時退散。「先生にユニ調査員さんのことは説明してあります。ぜひいろいろ案内してあげなさいって歓迎ムードでしたよ。出欠を取った後は自主学習なのでメイン・キャンパスにご案内しますね。」と言う千紗さんの言葉に甘えてしばし教室の外で待つことにしました。
アットホーム&フレンドリー
出欠を済ませた千紗さんと校舎内を歩いていると、すれ違う先生たちが次々に「やあ、元気かい?」と声をかけてきます。ほんとにフレンドリーだね、と調査員が言うと「本当にそうなんです。さっきすれ違った先生はファインアート担当だから私とは全然関係ないのに、こないだなんか ‘君、第一志望はどこにしたの?準備は進んでる?’って突然話しかけてきてくれて。みんなが顔見知りみたいな感じで、なんか大きな家族に近い雰囲気ですね」
メイン・キャンパスへ出陣
「一度入ってみたいと思いながら、まだ行ったことがない」というかわいいカフェの脇を通り過ぎてメイン・キャンパスに向かいます。キャンパス移動というよりはお散歩コースを歩いているみたい。ロンドンなのに田舎のようなほのぼの風景を楽しめるのは、UALの中でもウィンブルドン学生だけの特権でしょう。
大きな公園の脇を歩いているとメイン・キャンパスが見えてきました。ここまで徒歩20分弱。
やる気無さ過ぎだろ、カレッジ・ショップ!
千紗さんの本の返却に付き合うために図書館に向かいます。途中にカレッジ・ショップ(画材の売店)があった…が、なんだか中が暗い?「ここ、すぐ閉まっちゃうんです。ランチ時にはもうクローズです。不便ですよね」って、それってやる気なさすぎだよ。
シアター関連書の充実した図書館
2フロアにまたがる図書館はコンパクトながらも本がぎっしり。「やっぱりシアター関係の本はここが充実しています。セントマの図書館にもありますが、こちらのほうが豊富じゃないかな」とのこと。学生の作品を展示する小さなショーケースもあります。
モダンなキャンティーン
本を返却してキャンティーンへ。外観も中身もモダンです。ビリヤード台やソファ、学生の作品などもあり、普通の学食とはちょっと違った雰囲気。ランチタイムのピークを過ぎていたので適当な場所にゆっくり席を取り持参のランチを広げました。これはなかなか美味しそう。
飛び入りランチタイム
いっただきま…と大口を開けたところで、「あらっ?!ユニ調査員さん?」という声が。振り向くと、MA Fine Artコースで勉強中の愛子さんが!まあ奇遇、ということで急遽愛子さんも交えたランチタイムになりました。
キャンティーン査定
キャンティーンの常連である愛子さんにメニューの感想を聞いてみました。「日によっては結構おいしいですよ。メニューは二つしかないけど、ベジタリアンかそうじゃないか、っていう。ま、何といっても安いしね」「ただね、水飲むときになぜか紙コップを買わなきゃいけないの。だから学生はみんな自分のマグとかグラスを持ってきてますよ」とのこと。ふ~ん、変わったシステムね。でも環境保護にはいいのでしょう。
(大学院生のスタジオにも)お邪魔しま~す
この際なので愛子さんにお願いしてキャンティーンのすぐ隣にある大学院生専用のスタジオも見学させてもらうことにしました。「他のカレッジと違って一人一人のスペースが広いことがいいところ。でも、自室でちょっと引きこもり制作しているとその隙に必ず他人に侵入されてしまうので、スタジオの机には名前を貼っておき、定期的にスタジオに来て自分の場所をキープることが重要です。みんなそれなりにフレンドリーだけど、日本人は私しかいないし、ウィンブルドンのMAはアカデミック性が強いから、こう見えても私、結構必死ですよ」
がんばれ、愛子さん。
インターナショナル・オフィスを突撃
探索終了前にインターナショナル・オフィスに立ち寄りました。留学生がお世話になるところです。ドアを開け放してある入口で「はろー」と声をかけると、ユニコン東京での面接でもおなじみの国際部長Wendyと右腕秘書のSusanneが出迎えてくれました。すぐに椅子を進めてくれ、いそいそと私たち3人にお茶を作ってくれる歓迎ぶり。意外にこまめな人だったのね。お二人の写真を撮っていいかしら?と聞くと「いいわよン、てゆーか、写真撮るって知っていたらオシャレしてきたのにぃ」と言いながらも二人並んでポーズしてくれました。「だったらこれも撮って撮って。やっぱり私たちの本性を知ってもらわなきゃ始まらないしね」と指さす先には、ずらりと並べたパイントグラス(ビールの大ジョッキ)の前でなぜかビクトリー・ポーズを決めるWendyの写真が…スコットランド出身だったのね。
メッセージFrom Wendy
将来の留学生に一言メッセージをぷりーず、とお願いするとこんなメッセージをくれました。
「ウィンブルドンは確かにチョット都心から遠いけど、スタッフも学生も敢えてわざわざここを選んで通ってくるのよ。それにはそれだけの理由と価値があるからだと私たちは自負しているわ。日本からの留学生は少ないけれど、彼らが寂しい思いをしないように私たちがしっかりケアするわ。英語をしっかり勉強して、私たちの学校に来てちょうだいね!」
(2010年3月訪問)