【コース体験記】高野愛子さん Wimbledon CollegeのMA Fine Artコース中間発表
2010.04.10
BA&MA課程
私の絵、さかさまだよ!
展覧会テーマ : i swore i sore
展覧会場 : The Nunnery Gallery
展示期間 : 25 – 28 Feb & 4 – 7 March 2010
出展者 : 高野愛子さん MA Fine Art @ Wimbledon College of Art)
ユニコン調査隊員、きょうは目を肥やしにWimbledon CollegeのMA Fine Artコース中間発表の展会場に出発。目指すはコース唯一の日本人学生としてガンバル愛子さんの作品です。
東ロンドンはBowにあるThe Nunneryという建物が会場だが、その名が示すように尼僧院をギャラリーに作り替えたスペースだそうです。会場を示す看板はあるのだが入口が分かりにくく誰かに開けてもらわないと中に入れない造りになっているのが難点というかツウ向けというか。
ドアを開けてもらうと、作品の品評会が行われていました。愛子さんの作品は奥の部屋にあるというので、品評会をそそくさとすり抜けて奥へ。
愛子さんは小さめサイズのPaintingを3点出展したそうです。出展者ではなくキュレーターが作品の配置や展示方法を決めたので愛子さんも展示空間を見るのはこの日が初めてとのこと。「あ、あれです、私の作品」と近づいてみると…
あっ!!!絵がさかさまにかかってるッ!!!
下の写真を見てください。左がさかさま展示、右が正しい展示です。3枚のうち、左上のグリーン系の絵が微妙~に違うのがわかりますか?
「作品の裏にちゃんとこうやって書いているのに、ホラ、This side UPって…」
キュレーターは逆さまにしたほうが素晴らしいと判断したのでしょうか、それとも単に間違っただけ?いずれにせよ、「いかにもイギリス」なエピソードです。解釈を間違ったことが幸いして作品が売れた、高い評価がついた、などコメディのような本当の話が日々囁かれる英国アート業界の現場に、私、奇しくも遭遇してしまったようです。さて、その皆さんはどちらが素敵だと思いますか?
愛子さんの作品は「ファンタジー」がテーマで、色合いの美しい、一見正統派のとてもきれいな絵です。しかしその制作過程はとても現代アート的。まず写真などをコンピュータに取り込み、画像を作りこむ。それをキャンバスにトレースしてその上からペイントを施す。こうした作業の陰にはファンタジーとおとぎ話の違いや消費社会についてなどの様々な考察とアカデミック・リサーチという苦労の積み重ねがあるそうです。深い…
WimbledonのMAFine Artの特色は「コース全体の雰囲気はのんびりしているが、アカデミックな色合いが濃い」ことだそうで、そんな校風が制作のプロセスにも影響してくるとか。たとえば愛子さんの隣で展示している人の作品は、コーヒーを淹れた後の豆のカスを使っているのですが、これは「世界中の都市の人口とコーヒーの消費量と輸出国の生産量の統計を取って云々」という結果の作品だそうです。確かにじっくり時間のかかったアカデミックなアプローチに聞こえる。
愛子さんは卒展に向け、今回の出展画と同じラインの作品を制作していくそうです。今回の中間発表展はMA学生たちの研修を兼ねた数日間の開催ですが、夏の卒展はぐっと大々的なものになるはず。お目にかかるのが楽しみです。