ユニコン24時

怪しい日本の外国人教師

2006.02.01

なに様コラム

先日ロンドン市内のスーパーで買い物していると、レジのお姉ちゃんにカタコトの日本語で「日本人ですか??」と声をかけられた。とうとつだったので驚いた顔をしていると彼女は続けて「私、先月まで日本にいました?」と言うのだ。「へ?観光で行ったの?」と聞くと「英会話の先生してた」という。そういえばこの前は事務所の清掃員の兄ちゃんも日本では英語教師としていい生活してたと言っていた。

このごろこの手の怪しい日本語をちょっとだけ話す元英語教師の英国人によく出くわす。ちょっとだけ日本語を話し我々日本人に対して実にフレンドリーな彼らは日本を懐かしむように「日本のどこから来たのか?」だの「日本のどこどこは知っているか?」だの聞いてくるのだ。でも何か変だと思う。彼らの多くは率直に言えば低階層の労働に従事しているのだ。日本ではまさに英語教師として「先生!先生!」と呼ばれけっこう優遇された生活をしていただろうし、東京あたりであれば毎夜麻布だ六本木あたりでバリバリいわしていた彼らが英国に帰るとその多くがいわゆる低階層の肉体労働者になるか、教師として働くと言っても中学や高校などではなくせいぜい街角の語学学校の臨時教師なのだ。

そこでこの素朴な疑問を知人のロンドン大学教授にぶつけてみると「能力のある奴が英語や英会話教師なんかやるわけない。ましてや地球の裏側の日本で英語の教師をやっていたなんて何の評価にも値しない」という答えが返って来た。続けて彼は「英国の良い大学を卒業した人間から見れば英会話教師なんていうのは窓拭きと同じ類いのバイト仕事だ」と言うのだ。つまり1時間英会話やって金をもらうか1枚窓を拭いて金をもらうかの違いだけで大した知識や能力も要らないバカ仕事だと言うことらしい。

昔、日本の地方都市で英国大学の説明会を行った時、「僕は今オックスフォード大学を卒業したイギリス人の先生に英語・英会話を習っていて、その先生から英語学習だけではなく英国の文化や教育そして留学についてのアドバイスもしてもらっているので安心だ」と誇らしげにいう学生がいた。実際にそのイギリス人の先生に会うと彼は「オックスフォード州にある専門学校で職能トレーニングを受けたあと、しばらく英国で建築現場の作業員をしていたのだけれど、ナンパした彼女が日本人だったので彼女の帰国に合わせてこちらに来てみたら英語教師としてけっこうな収入になるし、皆からは先生として尊敬されるし、外人が珍しいのか毎日のように地域の人から豪華な食事に招待されるし、お陰で食費は浮くし最高だよ」と悪びれずに抜かすではないか。このイギリス人のアドバイスを真に受けている学生がいるかと思うと何だか複雑な気持ちになった。冷静に考えればオックスフォード大学まで出た優秀な学生が、イギリスから見たら東の端の日本という島国のそれも地方都市で英会話教師に身をやつしているわけない。もし事実だったとしたらそいつは余程の日本フリークか変人に違いない。つまりまともじゃない。

英語や語学教育の学位を持ち、外国人に英語を教えることに情熱をもつ真剣なネイティブの教師も日本にいるに違いない。しかしネイティブの教師が増えているにも拘らず、年々日本人の英語力が落ち込み北朝鮮並みとまで揶揄される現状を見ていると、単にネイティブだというだけで英語を教えるということもまともにできない連中が教師としてのさばっているのだから仕方ないかと妙に納得してしまうのだった。日本の英語・英会話教師の職って英国人大卒の失業対策か?!?

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