2011年01月20日
【この人に聞きました】File12. 岩本吉隆さん
ユニコン学生、またもや奨学金ゲットしちゃいました
2010年秋からCSM MA Fine Artコースで学んでいる岩本吉隆さんが、UALで彫刻を専攻する大学院生を対象にした奨学金The Cecil Lewis Sculpture Scholarshipsを授与されました。
実は岩本さんはロータリー財団からの奨学金ももらっている“チョー”優秀な学生で、赤字が普通の留学財政も彼に限っては大黒字。これは大変めずらしいケースです。本人もウキウキで、この報告に来てくれた日は「こうなれば他の奨学金にも申し込む」と鼻息荒く決意を新たにしていました(だんだん留学の目的がずれてきている?)。
「エーッでもさ、それってあなた奨学金のダブル取りじゃん。ロータリーにお金返さなきゃいけなくなるんじゃないの?」というユニコンの質問に、「へっへっへ、いいんですよ。これでも僕、ロータリーのお世話役の方に一応正直に報告しました。そしたら向こうも“うーん、まあこれは君の作品への“賞金”という捉え方でいこうじゃないか。私たちからのお金は“奨学金”だから種類の違うものだし、そのまま持ってていいよ”って言ってくれたんですよ」って・・・なんという太っ腹!
ちなみに今回もらった二つ目の奨学金の使い道は?「親に返しましたよ、これまでいろいろ出してもらってたんで」って、岩本くん、君はエライ。普通はそこでまっすぐ隠し財産行きだよと言うと「いや、ボクも実は“しまったな、黙ってりゃよかった”って思ってんですけどねーはっはは」ってやっぱり?いやいやわかってるわ、それはあなた流の照れ隠しで本当は親孝行者なのよね。もちろんこの裏話は公開せずに黙っておくわ。留学話に必要なのはやっぱり美談よね。
さて、ここで岩本くんの持ってきてくれた奨学金授与式の様子や奨学金応募時の作品の写真をお見せしながら、本人の感想を聞きましょう。
(向かって左が奨学金提供者であるCecil Lewis氏の娘さん、右3人が今回の彫刻奨学生。)
当日は和やかな雰囲気で、「絵を見ながらお酒を飲んで、奨学金提供者とお話をして、ついでに他の奨学生とも友達になって情報交換しよう」という感じでした。
(別の奨学金をもらった陶芸学科の学生と。)
今回の奨学金には大学が始まってすぐに出願して、決定の知らせを受けたのが10月、レセプション(イベント)が11月末に開催されました。もともとはUALから「こういう奨学金があるからよかったら申し込んだら?」みたいなメールが来たので「んじゃ、試しに」って感じで出してみたら受かっちゃった、という感じでした。
石の作品をやってると言うと古い古い(Old Fashioned)とこちら(イギリス)では言われますけど、僕はそんなことはないと思います。だって、実際にはそう言いながらも僕のことを入学させてくれたし、入ったら入ったで石をやってる人間はめずらしいのでおもしろいと言ってくれる。そこで今回の奨学金応募時のStatementには、僕が気付いたこととして「“これこれの素材をやっているから古い”ということじゃなくて、そこにどういう現代性、コンセプトを表現できるかということが問題であって、それができさえすれば素材の古さというのは関係ないのではないか」ということを書きました。
また「なんでお金が必要なのか、どういうふうに使うのかを書け」といわれたので、「僕は石をずっとやってるので、設備費も経費もかかる。そして材料費もかかる。だからお金ほしい」と単刀直入に書きました(笑)。
ただ、彫刻の奨学金とはいっても別に必ず彫刻を作れってわけではなく、何を制作してもいいという太っ腹な奨学金です。実際、今回の奨学生3人とも現時点では彫刻を作ってないんですよ。なので「おれたち彫刻の奨学金もらってんのにみんな絵かいてて、全然彫刻やってないよねーっ」と冗談言い合ってます。
ボクはMAに出願する前にCSMのオリエンテーション・コースをやったのですが、これがかなり効いたと思います。僕は日本で大学院まで出ているので、基本的にアート初心者向けコースであるオリエンでは、そりゃ技術的なことは「今更これやらなくてもいーんだけど」的なことももちろんありました。でも、そういうことでない、もっとイギリスの美大で勉強するにあたっての根本的なキーポイントを学べたと思うのです。
日本にいる時からオリエンを経てMAに出願する前までの間に何人かにポートフォリオを見せましたが、日本で会ったコリン先生(UALの国際部職員で、自身も現役の彫刻家)は褒めてくれたけど、別の何人かの教授にはけなされたりして。同じものを見せてるのになんでこうも反応が違うのかなって思ってたんです。
それでこちらでオリエンをやって、英語学校に通ってIELTSを伸ばして、PAEPに参加してコースが始まって・・・といろんな段階を経て今回の奨学金受賞までこぎつけたわけですが。そういうプロセスを全部振り返って今考えれば、僕が作品を見せた当時けなした人たちも、あのとき既に僕がこちら流のコンセプトに則ってきっちりした英語で(アカデミックな美術評論家が使うような専門用語をちりばめつつ)プレゼンをできていれば理解してくれたんじゃないかな、と。やはり結局は英語力が一番大事っていうか。そういうことを痛感しています。要は作品がいいことはもちろんですけど、ある意味それより大事なのが「見せ方の問題」ってことですよね。
日本人はコンセプトについて考えないし、説明できないし、うまく見せられないし。技術的にはみんなとてもうまいのに、それを英語で表現したりきれいにポートフォリオにしてうまくプレゼンする力がないんです。そういう授業自体が日本にはあまりないから。そして英語もできないし。なので、そういうところで損をしているのかなと思います。何といってもモノを言うのは英語力なんですよ。
ちなみに、これが今回僕が奨学金用に提出したポートフォリオの一部です。
筑波での大学院生時代の作品。 これは白金台でグループ展をやったときの展示風景です。 タイトルは「スプリンター(破片)」。月の表面を切ったようなイメージの作品にした。 |
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上記写真真ん中に見える作品 |
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絵画作品。 Sculpture Awardとは言っても、あくまでメインが彫刻であれば絵の作品も提出可。なので、「こういう絵で表現したコンセプトを彫刻として表現してみたい」という書き方をすれば全く問題なしです。 |
今回の奨学金に関しては、生まれて初めて“Award”というものをもらったので感無量でした。これでやっと履歴書に書けるものができたっていうか。この奨学金はHomeとInternationalに部門がわかれていて、Internationalの候補生選出にあたっては「英国にないおもしろいもの」を探していると思います。なので、日本人として日本でやってきた作品を見せたということは絶対に大きかったと思います。日本でやっていることは、ロンドンの人から見るとめずらしいことも多いと思うんですよ。それを「英語の文脈」にちゃんと変えてプレゼンして見せることができれば何の問題もないのではないか、と思いました。「日本でやってることをこっちに持ってきて、こちら流の提示のしかたをする」ということです。それができれば絶対におもしろいと思ってもらえると思います。こういうことを日本の学生にももっと知ってもらって、もっと後続が出て欲しいですね。
な、なんと頼もしい。これからも奨学金ハンターとして、いや奨学金が向こうから追いかけてくるような一人前のアーティストとして、羽ばたいていただきたいわ。ユニコンも陰ながらオーエンしてます。
岩本さんが授与された奨学金はこちら:http://www.arts.ac.uk/lewis-scholarship-pg.htm
岩本さんのサイトはこちら:http://yoshi-iwamoto.com/index.html
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