2010年04月01日
【コース体験記】CSM Graduate Diploma-Fashion 鎌倉明香さん
- 超すぱるた進学塾でそれを知った -
Sayaka Kamakura
CSMのGraduate Diploma in Fashionを卒業し、この秋からRCA (Royal College of Art)のMA Fashion Womenswearで勉強中の鎌倉さんに、ポートフォリオとスケッチブックを見せてもらいました。
面接に持っていった作品とスケッチブックをそっくりそのまま持ってきてくれたのですが、まず彼女が抱えている膨大な量のスケッチブックに驚愕。開いてみて、その密度の濃さにこれまたびっくり。
思わず「うわ・・・こりゃすごい一年間だったのね」とコメントしたユニコンに、「いやぁー、大変でしたよほんとに」という鎌倉さんの言葉には実感が超どっしりこもっていました。
スケッチブックに続いて見せてもらったポートフォリオにはとてもわくわくさせてくれる作品がたくさん詰まっていて、これがセントマ・ファッションで成功を収める学生の作業量か、これがRCA Womenswearを突破するポートフォリオか、と改めて「普段は近すぎて忘れてるけど、やっぱしすごいんだね」とスタンダードの高さを再認識したのでした。
その後コースでの日々や面接のときの話を聞き、またまた「うわー、そりゃすごいね(いろんな意味で)」の連続。
果たしてこの1年がどんなものだったのか?セントマでファッションを勉強するというのはどういうことなのか?「Grad Dipは超スパルタ進学塾、おちこぼれを有名大学に入れるぞ!みたいなコースでしたね、今思えば。ロンドンのFashionのFの字も知らないようなポケ~っとした留学生たちをここまでたたき直したというか。」と振り返る彼女のビジュアルと言葉をとおして、皆さんも一緒に追体験をどうぞ。
全部見られてる
ロンドンで、セントマでファッションを学んで、やっぱりBUNKA(出身校の文化女子大学)とか日本のファッションと全く違うじゃないですか。ロンドンにいると、とにかく日々の行動、生活のすべてが常にファッションを意識したものになるっていうか。BUNKAにいるときはあまり意識していなかったけど、こちらに来てからは、コレクションは絶対チェックする、ファッションやってる人に見られなかったらどんなに作品がよくても面接に行った瞬間からもうだめ、見た目からファッションパーソンを醸し出そう、とか、いろいろ意識的にやるようになりましたね。自分を変える、という意味でもいい勉強になりました。「ソウイウふうに見られてる」と思うようになったら、変な格好をできなくなった(笑)。たとえば、MAの面接でも、先生に「そのジャケット、オーバーサイズだけど彼氏の?なかなかじゃない」とか、「その香水いいわね、どこの?」とか、とにかく全部見られてて・・・あー、この1年で身につけてきたのはこういうことか、とその時に実感しました。
ファッションする
BUNKAではもっと「作ること」をやってた気がします。もちろん、BUNKAのときから「ファッションデザインをする」ことは好きだったけど、「ファッションする」ことはそんなに好きじゃなかった。その違いがどういうことかっていうのは言葉で説明するのが難しいんですけど、ただ机に向かって描くだけじゃなくて、買い物したり、みんなの格好を見たり、そういうことも含むってことかなぁ。「外に出る」「ショッピングする」っていうのも立派な勉強なんですよ。たとえば、ある女の子がDover Street Market(ロンドンの有名セレクトショップ)を知らない、って言ったら、先生が超怒っちゃって、「何ですってぇ?!DSMを知らないですって?!?あなたそれでもファッション学生のつもりなの!?今から行ってきなさい、今よ!!」
と叫び声を上げたりとか・・・あと、ある日教室に入ってきた先生が、生徒たちの服装を見て悲鳴をあげて「あなたたち、何その格好?!それでもファッションやってる学生?!?信じられないわ、今この場に有名メゾンのリクルーターやMAの先生が来たら瞬時に全員アウトよ!ちょっと来なさい、ファッション学生がどうあるべきか見せてあげる」といって教室を出て校舎内をうろついて、「ホラ、見てあの子、あれは絶対にファッション学生でしょ」「ほら、あの子」「あの子も」「見て、あの子たちはみんな一目でファッション学生とわかるでしょ。これが大事なのよ」と言って聞かせて、「じゃあ今度の水曜はドレスアップデーね、みんなちゃんとおしゃれしてきて!」と宣言するとか・・・日本だとないですよね、こんなことは。外見と中身は関係ないと思ってたけどファッション学生を意識して自分のアウトフィットを見ることができたのでこれはこれで楽しかったですよ。ドレスアップデー。笑
デスクワークとフットワークを
私たちのひとつ上の代の男の子でCSM MA Womenswearのオファーを取った子がいて、今同じキャンパスにいるんですけど、彼はハードワーキングでとにかく有名で。Graduate Diploma時代の話を聞くと、「ボクは月~金まで朝から晩まで学校にいた。月に一回IDとかDazed & Confusedとか有力ファッション&カルチャー誌が出る時期には、空いてる日に近所のBorder’s書店にいって店内のスタバで新刊を全部チェックする、平日にショーディッチのバーに行ってそこにいる人としゃべってコネを増やす(週末はシロウトも含めて混雑しているから業界人とのピンポイントでの出会いが難しいから平日限定だ、って言ってました)、などということを全部義務にしていた。」というすごい話をしていて、彼はほんとにデスクワークとフットワークを両方やってたって感じですね。
地獄の100体デザインでの幕開け
コースはほんとに、大変ですよ。いきなり初っ端から「はい、100体デザインね」と言い渡され、友達と深夜「私は60まで行った」「私はまだ半分」「頑張ろう」と携帯メールのやりとりをしながらボロボロになって100体描いていったら、「はい、がんばったねー、じゃあもう100体」・・・って、エーーッ!!!てかんじでした。
とはいえ、基本的にはやりたい人だけやればいい、学生はいっぱいいるし、落ちるなら勝手に落ちれば、という環境です。タフです(笑)。
ただ、外で「CSMのファッション学生です」というと、それだけでいろいろな機会が増えます。生地屋にいっても優先して頼んだ生地を最速アレンジしてくれるし、コレクションに招待状なしで行っても入れてくれたりします。その分、プレッシャーやまわりからの期待も高いということをひしひしと感じますけどね。
身支度する・ファッションする
そういう環境の中で、「ファッション」そのものについて意識するようになりました。「身支度をする」ということと、「ファッションそのものに興味を持つ」ということは違うと思います。日本の女の子はみんなきれいに身支度をしているけど、ファッションをしているかというとそうではないような気がして。哲学とか考え方とかまで入ってくる、ってことですかね、うまく説明できないけど。その点、ロンドンの女の子たちにはファッションしてる人がたくさんいるんですね。
いいポートフォリオを
コースはできたばかりだし、オーガナイズもされてないから不満いっぱい、みたいな人もいたけど、自分的にはとてもよかったです。どうやったらMAの面接に通るか、どうポートフォリオを作るか、どうプレゼンをするか、というのを学びます。とにかく「いいポートフォリオを」というのが第一目標です。とにかくポートフォリオ・レビューがしっかりしていた。つまり「服」以外のこともいっぱいやってました。そう・・・服作って終わりじゃなかった!ってのが一番驚いたことかも(笑)。「えぇーっ、なに、終わりじゃないの?!」という感じで。
イラストを描いて、見やすいレイアウトして、どんな人にでも自分の作品を分かってもらえるように自分のポートフォリオを作る。それはBUNKAのときにはなかったことだったから。とにかく、ポートフォリオそれ一つで自分のワークを見せられるように、というのが基本スタンスですね。一番大事なこと。ただ、そこまで行くためには、服作り以外のこともいっぱいしなくちゃいけないってことがセントマでの1年でよくわかったかな・・・。エキシビション(卒展)には色んな人が来ていて雑誌の取材、リクルーター、他大学のチューターなどなど。けっこうみんないろんなチャンスをエキシビションでつかんでました。
偏った英語が?
そんなわけで、まあこの一年大変でしたけど、よかったですよ、ほんとに。それにしても偏った英語が身につきました、awfulとかterribleとか(笑)。否定的な単語のオンパレード(笑)。自分では使わないですけど。やっぱりというか、みんな先生も感情的なので、そういう大げさな単語がたくさん登場しますね。良い時はものすごく良いって言うし、悪かったらものすごく悪いって良います。極端ですね。でも、ファッションをやってく上ではみんながこういう人たちなので、必要な語彙が身に付いたのかな?!と思いますけどね?!?
「ファッションする」、か・・・むむむ、と話を聞きながら思わずうなってしまいました。これは名言。「音楽する」という言葉をよく使っていたのは、日本を代表するオーケストラ指揮者の小沢征爾さんでしたが、まさにそれと同じコンセプトではありませんか。鎌倉さんも小沢さんのように世界的に活躍する日が遠からず来るか?!
鎌倉さんの作品が見られるウェブサイトはこちら
http://sayaka-kamakura.blogspot.com/
投稿者 unicon : 2010年04月01日 22:49