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2004年03月11日

なに様ブログ
便器では顔を洗うな

以前、出張で英国人の友人と日本に行ったときのこと。ある日踏み切りを渡ろうとすると、遮断機にさがっているノレンのような黄色いのは何だと、この田舎者の英国人が聞くので、“くぐるな”って書いてあると言うと、彼はしごく驚いた顔をした。またある時。高い塀の横を歩いているとこれまたそこに白い紙が貼ってある。何が書いてあるのだと聞くので“登るな”って書いてあると言うと、これまた怪訝な顔をする。
 
 そんなことがあって、ある日。ホテルのトイレに行った彼が、そこにあった貼り紙を見て、きっと“便器で顔を洗うな”って書いてあるのだろうと自信ありげに言うので、つい噴き出してしまった。何故そう思うのだと聞くと、日本というところは、人間の依存心を助長するのが常識のようだと言う。例えば、踏み切りを渡らないためにバー(遮断機の捧)があるのに、くぐるなって注意するし、侵入されないために作った塀には登るなといわなきゃいけない国だろうと、したり顔で答えるのだ。

 常識というのは国々によって違う。例えば、信号が青であれば進めるし、赤であれば止まるというのは万国共通だ。でも英国では歩行者は信号を守らないのだ。歩行者は赤信号の交差点でも車が途切れればバンバン渡る。警察官も渡る。でもなかなか人間って轢かれない。
 ロンドン名物2階建てバスの多くには乗降口にドアが無い。つまり安全が自分で確認できれば、いつ何処でも飛び乗って良いのだ。でも引きずられたり落ちたりした人をあまり見かけない。
 一方日本に行くと、皆お行儀よく信号を守る。バスや電車に乗ると足もとに気をつけろだとか、吊り革をしっかり持てと頻繁にアナウンスされるし、天気の悪い日にはカサを置き忘れるなとまで注意してくれる。でも毎年交通事故で亡くなる人は日本では1万人を越え、英国では3千人程度なのだ。
 
 社会や他人に依存する社会では、そこに住む人間をマヒさせる。ケガしたくないとか死にたくないといった、動物としての本能すらも、社会のルールや常識に守られているという依存心を植えつけられるとなくなってしまうのだ。だから信号が青になると、車が来ようが来まいが、とにかく横断するし、遮断機があっても「くぐるな」って書いてないと渡るのだ。そういう人は確かに便器で顔を洗うのかもしれない。

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