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第11話:もうひとつの時系列

しぶとい熊子さんが熊本から出てくるまでまだ2年待たなくてはいけません。
その間、静子さん一人きりの時系列の旅はあまりに惨い(むごい)、という声を聞き、わたしは伴走者を物色。
いました。福岡に一人、山形に一人、少し遅れて福島に一人(またまたイナカもの?)。
おお、福岡のほうは運よく静子さんとタメ年でアートを目指していて、しかも渡英時期が静子さんからほんの1ヵ月遅れの5月。福子さんは帰国しちまったし、この際、この福岡出身をフク子として静子さんの第一伴走者をしてもらいましょう。

フク子さんはこんな人
 1984年生まれ。福岡県天神出身。
 兄弟:弟ひとり
 得意だった科目:世界史
 嫌いだった科目:美術
 部活:気ままな帰宅部
 ●ユニコンとの初コンタクトは色々あって渡英後



●●●2002年5月にぽっかりユニコン・ロンドン
      事務所に現れるまでのフク子の自分史は●●●


1996年:フク子13歳(中学生)
中学入学早々父親に「高校はどこに行くのか」と聞かれる。幾つかの優秀校以外、地元にあるのはどうしようもないと言われる部類の高校ばかりだが、父の意図は、イギリスにでも留学してくれ、と言う意外なものだった。古い日本人は文明開化期の影響か、やはり英国贔屓。さらに、あわよくば高校くらいから留学してくれ、と煽られるが、しっかり避ける。なんで私がイギリスへ? 留学なんてはなっから頭になかった。

1999年:フク子高校1年
授業科目は自分で選択するという選択制の新設校に入学。基本教科さえ抑えればあとはやりたい放題という制度に守られて英語は無視(一応、時間調整のために取ったのだが、あまりにも暇な上に方言丸出しで英語を話す先生に拒否感が)。おかげで単位だけはゲットできたが、文法などの大切な知識は置いてけぼりとなった。

必須科目だった美術は「これを描け」と指定された範囲内での授業で、これにも拒否感。美術鑑賞は好きなのに学校の美術の授業だけは好きになれない。という次第で好き勝手にやっていたら、これまたギリ単位で終わった。

2001年:フク子高校3年生の夏
そんなこんなでも卒業に必要な単位は2年で取得していたので高校最後の年は何か好きなことをしようと思った。嫌いな学科はたくさんあっても好きな教科となると、世界史くらい。じゃ、外国かな? 父からは元々「イギリスへ行ってくれ」と言われていたし。と言うわけで、高校3年生の夏休み、(英語も話せないのに)単身イギリスはOxfordの片田舎へ2週間の旅。

またしてもというか、英語学校の勉強には拒否感しかなかったが、イギリス(の田舎)生活はしっかりエンジョイ。そして思った。
「英語わからなくても、外国ってなんかイイ」

あるとき、パブでオックスフォード大学で教授をしているという紳士に出会った。例によってイギリス人特有の、「キミは何を勉強してるの?何を勉強したいの?」のwhyから始まる質問が来た。
「アートがしたい。でも、日本の芸大は入っても面白くなさそうだし何年も続ける自信が無い」と(いう意味のことを)一生懸命話すと、「イギリスでやってみたらいいじゃない。この国じゃアートはもっと哲学的なものよ」
帰国してから、ひっそりと留学という道を考えてみるが、自分の能力を考えると大変そう…

2001年:フク子高校3年生の夏
(留学するかどうかはまだ決めかねていたが)推薦入学の準備を進めていた担任に「とりあえず日本の大学には行かない」と告げて彼を絶望のどん底に叩き落す。
3月に高校を卒業、自動車免許もゲットし、これからフリーター?という矢先、実家の裏のマンション(オフィスビル?)前に看板を発見。留学斡旋をしているようだ。怖いもの知らずの私はアポ無しでいきなり突入。

そこには一見気の弱そうなIさん(男)だけが居た。「留学ってどうやってするのか?」という素朴な疑問から、やがて、「何をしたいのか」という話に及んだその時、フラッシュバックされるオックスフォードのパブでの会話。

「イギリスの美大ってどんな感じなんですか?」の私の質問を待っていたかのようにIさんが取り出したのは、ロンドン・インスティチュート(現ロンドン芸術大学)のパンフレット。開いたとたん眼の前に広がったファッション・ショーの写真に純粋に心を射抜かれた。Iさんの事務所から徒歩1分の自宅に帰宅するやいなや母親をつかまえ「私、ここに行く」と、パンフレットを見せ説得モードに入った…と言いたいところだが、その前に「行けば?」とアッサリ言われてしまい、あっさり留学決定。

Iさんはロンドンの英語学校の入学手続やら何やら色々お世話をしてくれたが、後から考えると、ユニコンのロンドン事務所を紹介してくれたことが何よりの最高のお世話であった。
時は2002年4月。ロンドンに飛ぶ日はもうすぐだった。

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