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第23話:眠り熊、ついに海を越える

「将来どんな人生を送りたいのか?」という質問に「せめて福岡に進出したい」と熱く夢を語っていた熊子さん。長年勤めていた会社に退職願いを出したことで踏ん切りがついたのか、ホントにロンドン行きのフライトに乗ってしまいました。

熊子さん(2005年1月:渡英。30歳)
ロンドン到着
行動を起すまでの時間こそ長かったけれど英語の勉強は秘かに頑張っていたつもりだった(渡英前に上京して受けたIELTSテストだってちゃんと6.0を取った)。だから、いつロンドンへ行っても英語については致命的な不自由をしないだろうと思っていたのに、着いたその途端から不自由ばかりだった。
まず、熊本の英会話学校で通じていた英語がロンドンではどうしてか通じない。通じないから時間を食って銀行でもスタバでもマックでも行列の素を作ってしまう。Pardon? Sorry? と聞き返される度に萎縮して英語が一層モゴモゴになり、そのうち声を出すのも怖くなってしまった。カフェテリアでの注文がなかなか通じないことに疲れてランチを抜いたこともある。
そういう意味で、(少しムッとしつつも)ユニコンのおじさんのアドバイスを聞いて第一ステップを語学学校から始めたのは正解だった。おかげで語学学校のある平日ならインチキ英語をわかってくれるおばちゃんがいる校内のカフェテリアでランチを買うことが出来た。

麗しのハイゲート
私が通ったのはSt. Giles Collegeという世界中にネットワークを持つ語学学校のハイゲート校。ロンドン市内にはジャイルズ・グループの姉妹校が2つあって、もうひとつはロンドンのど真ん中、ラッセル・スクェアに、ハイゲート校はど真ん中からバスで40分くらい北寄りにある。なぜか、ユニコンのおじさんはやたらとハイゲート校を推薦。私が田舎者だと思って繁華街から隔離しているのか?と勘ぐって理由を訊いたら「確かに」と返事されたのには驚いたが、来てみて彼の判断が正しかったのを実感した。

第一印象は「わぁ~きれいなとこ」。いかにも、な豊かな緑の木々の合間からイギリス特有の赤茶レンガの家が見え隠れしていて絵本みたい。学校もこじんまりしていて妙にファミリア&フレンドリー。ホームスティ先も学校の近所に住む人の良さそうな老夫婦。生き馬の目を抜くような市内の繁華街から40分しか離れていないのにこんな別世界があるなんて。社長さん、目がお高い。

サンキュー、スカーレット
学校では、発音のコツや日本では教えてくれないような日常会話に出てくる言葉を「褒め殺し?」手法で教えてもらった。ところで私のクラス教師は私と同年齢の男性だったが、数年前までは人生を捨てたようなホームレスばりの生活をしていたと言う(フツー、言わないよな、そんなこと)。だが、あるときスピーチ・セラピーに目覚めて以来、英語教師をする傍ら、多くの施設でボランティア活動を行っているという。そのせいか、彼の授業は内容自体も授業前のウォーミング・アップのゲームも趣向が凝らされていて今でも印象に残っているような楽しいものだった。

「ビデオ見てみんな笑っているのに私だけ内容を理解してないみたい」とチュートリアルで不安を吐露すれば「大丈夫、みんなもわかってないと思うよ。僕に合わせて笑っているだけ」と励ましてくれたこと。「ホモセクシャリティに対する自国の世論」の題での課題エッセィでは、文法の間違いよりも視点のユニークさを評価して「Excellent!」とほめてくれたこと。
スカーレット、最初の先生が君で本当によかったよ(男なのにこんな名前、でもストレートです。結婚しているし、去年子供も生まれたし)。
勉強だけでなく、ロンドンを楽しみ、生活を楽しみ、国際色豊かな学生達とのコミュニケーションを楽しみ。ホームスティでの自炊はできないので、それぞれのお国レストランを見つけて食べに行ったり、映画に行ったり、ピクニックに行ったり。ある意味、セント・ジャイルズでの10週間がトータル約2年間の留学期間の中で一番インターナショナルだったかも。


◆心に残る一冊 :プリズン・ホテル(浅田次郎)
◆好きな作家 :浅田次郎(好きと言うほどでもないが一番読んでる?)
◆心に残る映画 :Billy Elliot(邦題:リトル・ダンサー)
◆好きなブランド :特に無いです…
◆日本より安いもの :パブのビール
◆イギリスで一番美味しいもの :ジャガイモとヨーグルト(日本のものと比べて、という意味で)
◆ロンドンで一番通った食堂 :Cafe Nero。UCL近辺の韓国料理店2軒。
 みさと(日本レストラン)
◆日本から輸入したいもの :暖かい便座
◆ロンドンでの得意料理 :納豆丼(キッチンに非日本人フラット・メイトが居ない時のみ、納豆を食べることを許されていた)
◆どこのガイジンが一番付き合いやすかった?:コロンビア、フランス


ホームスティの感想
ロンドン留学で一番初めに出会った人たち。何かを相談すると我が子のように一緒に一生懸命考えてくれるし、日本語で聞いたら恥ずかしくなるようなsweetな言葉で励ましてくれた。
ホスト・ママに至っては、いい歳こいた留学生(私)にオトコの心配までしてくれた。当時同宿していたスイス人男性を眼で追って『クマコ、彼なんてどう? 彼女は一応居るんだけどね、うふ』とか、学校での話題に男子学生の名前が混じると、『その子は独身なの?』と真剣に聞いてきたり。
セント・ジャイルズ校同様、ロンドン生活のスタートを彼らと過ごせたことにとても感謝しています。頻繁ではないけれど、今でも手紙のやり取りをしていて、一度なんかホスト・パパ(と言っても70歳以上)が『クマコ~元気か~い。ロンドンに来る予定は無いのか~い』と国際電話をしてきてくれました。時差を勘違いしていたようで日本時間では夜中の3時でしたが。
心配していた食事に関しても、インド系イギリス人なのでカレーが超おいしく、お米料理もよく出してくれました。ま、ほんのごくたまに、『おおっと、今日は明らかに手を抜きましたね』という日もありましたが(マッシュ・ポテトの上にちょこっとコーン・ビーフが乗っかってるだけorフライド・ポテトの上にちょこっとビーンズが乗っかってるだけ、とか)(全部イモ。好きだからいいけど)。

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